
サイジニア株式会社のデクワス・コンセプトの源流は、20世紀末に遡ります。当時、ぼくらは複雑系(Complex Systems)、進化・学習型創発的計算理論、ロボット工学の研究を大学で行っていました。特に、ロボット工学の分野においては、当時、ビヘイビア・ベースド(behavior-based)のアプローチが注目されつつあり、環境とのインタラクション、ビヘイビアを通じてロボットが自ら学習・進化し、より高度なビヘイビアを獲得するような方法論が研究されました。これらの方法論をベースに、ぼくらは、ユーザの検索ビヘイビアを学習するソフトウェアエージェントを配置し、ユーザの嗜好を学習することで他ユーザの情報閲覧行為を支援するシステムの基礎を開発しました。しかし、残念なことに、当時はそのようなアイデアを活かせるアプリケーションドメインがまだ存在していませんでした。
一方、20世紀末といえば、ようやくWebが広く認知されるようになり、その主要アプリケーションの一つとして、WWWの検索エンジンが登場した時代です。当時を振り返れば、あのころは、Webサイトを何億ページカバーしているかとか、そのレスポンスに何秒かかるかなど、サーバ性能の競争でもありました。つまりは、情報科学分野のWebに対するアプローチは、ハードウェアの高性能化、およびそれを扱うソフトウェアを高度化し、力技で情報空間を制すること(あるいは、それによって自社技術のパフォーマンスをアピールすること)でした。
あれからWebは目まぐるしい発展を遂げ、今ではWeb2.0と呼ばれるほどにバージョンアップしたと言われています。最大の変化は、ユーザが情報消費者から情報生産者にもなったこと、いわゆるプロシューマとしてコンテンツを生み出し、そのビヘイビアがWebに蓄積されるようになったことです。大量に蓄積され始めたWeb上のビヘイビアは、observableかつtraceableであるゆえ、ビヘイビア・ベースドなアプローチにうってつけです。ここから、ぼくらは、デクワス・コンセプトのインプリメンテーションとフィールドスタディを開始しました。
ユーザのビヘイビアを基点に動作するシステム――これがデクワスの特徴になっています。
そして、デクワスには、もう一つ、重要な信条があります。
そして、デクワスには、もう一つ、重要な信条があります。
自然科学という言葉を思い浮かべてみてください。自然を科学するという行為によって、人類は飛行機を発明したり新薬を開発したり、大きな進歩を遂げました。いずれにしても、そこには、まず対象を観察・分析してその内部の普遍法則・メカニズムを発見し、それを工学的に応用するというプロセスをたどるのが一般的です。しかし、情報科学という言葉には上記プロセスの前半部分が含まれていません。情報とは、観察する対象ではなく、人間が人工的に作り出した体系であるがゆえでしょうか。上述した、初期の検索エンジン競争のように、マシンパワーとロジックの洗練度によってシステムの進化が実現されてきました。
しかし――と、ぼくらは思います――Webがこれほど発達するに至った21世紀、Webという情報空間は、21世紀になって登場した新たな森羅万象の一つであると。そこに参加しているのは、異なるインセンティブを持って知的に反応する我々、無機的に仕事を遂行するWebクローラなどのロボット、そしてリアル社会を反映して行き交うビジネストランザクション等々、結局は、無数のエンティティから成る世界がWebです。そのようなエンティティが織り成す世界の動作原理が解明され応用することが出来れば、もっとこの情報空間を上手に扱える情報システムが構築できるはずです。
デクワスでは、特にここ数年で注目を集めるようになった複雑ネットワークの科学、情報伝播とパーコレーション、複雑系科学の観点からWebを捉え、グラフ理論、進化・学習型エージェント技術、自己組織化マップなどの方法論によって、“出くわす”体験の実現を目指しています。通常、情報・検索・Webと聞けば、テキスト解析などの技術が思い浮かびますが、開発者の理屈で構築された情報システムか、あるいは、デクワスのように、そこに内在する(はずである)普遍原理をもとに構築された情報システムが優れているのか、これは大きなチャレンジです。
事業会社であるサイジニア株式会社(代表取締役 吉井伸一郎)とは、どんな“想像”をも理論に落とし込んで思考するサイエンス力と、そんなアイデアを具体的に“創造”するエンジニアリング力の結晶として誕生しました(Science+Engineer=“Scigineer”)。Webをいう新たな森羅万象の複雑さに対して、観察・モデル化・実験・実装・検証を速やかに実行し、デクワス・コンセプトの実現を目指します。

